ふるふるフルムーン

カップルみたいなことをして わたしをその気にさせて  ひどい人だな本当に

そっけなくされると追いかけたくなるし、振り向かれると悲しくなる。私と彼の間には、反発し合う磁石の、どうしてもくっつけられないあの隙間みたいなものがあって、離れていればわからないのに、近づくほどによくわかる、力を込めれば込めるほどそこにあるのがありありとわかる、あれ。あれがある。

今夜釣れない釣りで堤防でひとりぼっちの彼が、月を見ながら私にメッセージを送ってきたことを、それが何年に一回の大きな月の日で、わたしの30才の最後の日であったことを、覚えていたいと思うよ。

「おっぱいがデカくてキレイで魅力的だ、だけどハートが一番だよ」

30才になったらもうやめようと言いながら、やめるやめる詐欺で一年経ってしまった。合コンの誘いも断り続けて、わたしは一体どこへ向かうんだろう。

ボーダー

係長(33)とバツイチおばさん(41)に進展があって、キスをしたということについて、超えちゃいけない線だったとか係長もどう考えてるんだとかあれこれ大盛り上がりでしゃべる休憩室のお昼休み、その10分前私は同じ席で(わたしの)係長とキスをしていた。今日夜会う約束をしていた。誰も何も、勘付いてもいないだろう。

帰宅して、冷めきったペットボトルのココアを証拠隠滅のように飲み干して、甘いなあ、抱いてるつもりなんて偉そうに言って、されるがままの、甘ったるい余韻の中で、こうならないと言えない本音について考える。

「彼氏ができたらすぐに言えよ、邪魔しちゃいけないし」

「Tさん、わたしTさんのこと好きなんですよ」

「知ってるよ」

係長はいつもわたしに、彼氏ができたらすぐに教えろと言う。我慢しなくていいとも言う。優しく突き放されて、つい、わかってると思うけど、好きだと言ってみせて、言うことで彼を責める。どうするのがお互いにとって優しいことか、わからなくなって、行き場を失って、どうにもならない言葉の代わりに、私達はセックスをする。

彼は疲れていて、私も疲れていて、抱き合って眠ることもできないまま、それぞれの家へ帰る。いい夫をいい父を、いい娘を演じ、明日になれば何食わぬ顔をして、おはようございますと挨拶をする。どこにでも歪みはあって、思うようにいかない日常をなんとか成り立たせるために、お互いをはけ口にしている。

許されることではないし、もし知れたらみんな私の事を軽蔑するだろう。バレなきゃいいと思っているわけでもない。

どうすればいいのかな。深いような浅いようなところへ落ちていく。考えることをやめたら、それこそ救いがなくなる気がして、ずっと、自責と愛と優しさについて考えている。

誰かにとって特別だった君を

ポカリのCM、さよならなんて云えないよ いいね。

オザケンの歌では、考えるといろいろ上がるけど、一番に思いつくのが、ドアをノックするのは誰だ?が好きってことだ。

あーーー 君とずっと眠りたい!!!

 

3日、妹の誕生日。妹もわたしもいま30歳。わたしが一年で唯一自分を若いと思える12日間。

 

今日、友人の赤ちゃんを見に、お祝いを持って友人宅にお邪魔した。かわいい。他になにもない、ただ かわいい いとおしい と思う。そう思ったことにほっとした。こんなこと絶対に口に出せないけど、本当は、私の中でなにか掻き乱されるのが分かりきっていたから、行きたくなかったんだ。かわいいと思えなかったら、わたし人としてどうしよう…って。私の近況を踏み込んで聞きたがっている様子だったけど、言えない、この場じゃ、こんな正しい力の前で、口にするのもおぞましい…と思って、話せなかった。夜に紛れてやっと言えるくらいのデリケートな話なんだから、あんまり面白がって聞かないで、面白くなんかないんだから、面白がってるわけじゃないのもわかってるけど、でも、子供の成長のように、誇らしく語れる話じゃ、全然ないんだよ… と、なぜか今になって腹立たしいような悲しいような気持ちになっていて、なんかだいぶ捻くれてるね私、やばいね。ってなるところまで想定済みだった、だから行きたくなかったんだよ〜〜もおおお  と、自分で自分を腫れ物にして、自分で自分を嫌悪している。

許してほしい。誰にも言ったりしないから。

どろどろしてる

私が人間くさくなる瞬間、生々しく彼を欲しいと思う瞬間だけ、それだけが本当で、普段お人形ぶっている私の、そういう瞬間と、彼は向き合いたいのだなと、なんとなくわかるような気がする。

1日から係長の下に他部署から移動してきたおばさんがいて、それがなんていうか、同性から嫌われるタイプの、いかにも男ウケ良さそうな、甘ったるい喋り方の、なんというか、いい年したぶりっ子の、家庭を持ったおばさんなんだけど、まだ女で、ものすごく間違いを起こしそうな、はっきりいうとセックスのにおいのする女だったので、ねえほんとにわたし、その度にこんなのおかしいって思うけど、わたし、本当は妬いている。心配している。不機嫌になっている。程度の問題もあるけど、普段浅ましいと思ってる肉食系のおばさんたちの、支離滅裂な肉食の話には、はーこれついてけんわと思うのに、それは表面上のポーズでしかなく、私の中にも肉食の浅ましい動物がいることを、自覚する。

それ自体が悪いこととは思わないけど、こんなにも感情を自制できないことが、わたしは嫌で、だって私は、いられるならいつまででもお人形でいたいんだもの。お姉さんとおばさんの狭間で、私には関係ないわって顔してたいんだもの!!!

その新しく入ったおばさんていうのが、課長が元いた課からあからさまにひっぱって来られたっていうのも怖いんだよ。今年度末絶対事務の移動ある。こういうコネと力関係の影が見えるとほんとに不安になる。ここで、じゃあ係長に相談しよう!とならないのは、彼にそんなこと言ってもどうにもならないと分かっているからで、彼に何か期待して関係を持っているわけではないからであって、わたしは彼のことが好きなんだって、思うけど、どうなんだろう。使えるものはなんでも使おうとは思うけど、やっぱそういうのにそこまで本気になれないよねというか、不利益被っても、組織の中で後ろ指指されるようなことはしたくないなと思う。

なにを言ってるのかわからなくなってきた。

ここ一週間くらい、ずっと21時すぎまで働いていて、本当に疲れた。今日休みだったけどほんとにまじで丸一日寝ていた。自殺しちゃった電通の人、大変だったんだろうね。一週間でも気持ち暗くなってくるし、何のために生きてるのかわからなくなるよね。

おばさんは昨日から勤務で、昨日係長休みだったから、今日顔を合わせたはず。それを見ていたかったけど、わたし今日休みだし、明日から係長が三連休で、わたし6日休みだから、ずっと会えない。抱きしめられなきゃおさまらない。はやく大丈夫だと言ってもらわなきゃ、わたしがどんどんどろどろになる。

中の上

試験の解答が届いて自己採点した。6割なら取れてそうだったのでよかった。意外と簿記が一番点が良さそうだったけど、簿記も答え四択ってなんかそれって…なんか…って思うよね。考え方わかってないけどなんとなく正解してる。

 

係長の娘さんなかなか具合良くならないみたい。精神的なところからくるものらしい。春に赴任してきた部活の先生と合わなくて毎日泣いてたんだって。私も同じ吹奏楽部で、部活楽しくて仕方なかったから、単純にかわいそうに思う。そこらじゅうCT MRIして、婦人科系の検査もしたけど、これといって異常が見つからず、はっきりとした原因は不明なまま、心のケアもできる遠くの病院に転院することになったって。もしかして不貞の罰があたっているのではと思ってしまう私は、それは私がおかしいんだろうか。

疲れていることだろう。彼は私を抱いているつもりだろうけど、わたしは、むしろ私が彼を抱いているのだとおもってる、いつも。

 

職場のめんどくさいバツイチのおばさん(41)が、随分年下の係長(33)に本気でお熱らしい。自分では抑えて隠してるつもりらしいんだけど休憩室でオープンに喋ってる。係長と私がいい仲なのではと勝手に勘ぐって勝手にジェラシー燃え上げて、周りに【壊れた機関車】と言われていて笑わずにいられない。夜LINEとかしたくなって興奮して眠れなくなるんだって。やばいよね。走り出しちゃうよね。無駄なトラブルに巻き込まれたくないので刺激しないように気をつける。なんかモテてる気になって気分がいいよ。実際は誰からもモテてないのに。

いとおかし

明日ついに資格試験の日。去年の秘書検定よりはるかに勉強してるけど、普通に考えれば大してしてない。でも落ちるわけにはいかないんや…!と言いながら今も勉強してない。んんん???

でも明日終わったらビール飲んで早々に寝るって心に決めてるんだ!もうはやく終われ!

 

ブラックサンダーきなこ味、「やんごとなき雷神 おいしさ いとおかし イナズマ級!」と書いてある。なかなかきなこ味。

ベタベッタ

昨日初めて朝ドラ見たんだけど、回想?で名倉のアップが映って思わず心の中で えっ名倉やないかい!と叫んだけど、もしやと思ってすかさず「朝ドラ 名倉」で検索すると当たり前のように候補に名倉やないかいがあって、世間はキャスト発表時にすでにこれを終わらせていたのだな…通過儀礼というやつか…と思った。

 

今日職場の健康相談で保健師さんに悩みとか身の上話をしていたら、なんか勢い余って号泣してしまった。ここ最近ストレスに感じることが重なっていて、それに触れられると泣きたくないのに泣いてしまう。普段表面張力みたいな感じで、けっこうぎりぎりで保っているんだな〜と、こぼれてしまって初めて客観的に思う。もうちょっと若い頃は我慢がきいたのに、年取るといろいろゆるんでくるんだな。

 

夕方係長に倉庫に呼び出される。明らかに泣いたあとの顔をしているし、その後様子もおかしいものだから、心配したんだと思う。係長今日娘さんが入院することになったんだって。風邪だと思っていたものが全然良くならないらしく、奥さんから随時報告の電話がきていた。ずっと具合悪かったんですか?そう…大変ですね…。という私の相槌に、そう…。と答えながら頬に手を伸ばしてキスをする。俺が(都合つかなくて)悪いんだよな、ごめんな、あれから誰ともしてない? うん。 俺も。帰りに会おう、いつにする。 わたし生理きちゃう。 じゃあ2、3日のうちに。(まあ2、3日のうちにくるんですけど。)抱きしめる。シャツにリップが付かないか心配する。

今こんなことしてていいのと思えど言えず 、しかし言わなくたって彼はちゃんと急ぎ足で帰っていく。それを見て安心するし、わたしを彼のものにしておきたい気持ちに、片思いの日々のささやかな救済を見る。

不思議なことに、最初は大して気にならなかった奥さんの存在が、長くなるにつれてどんどん気になっていることに気づく。どんな人、どんな声、どんな容姿、どんな性格、どんなプロポーズ、どんなセックス、どんな出会い、どんな結婚生活、お互いをどんなふうに思っているのかetc etc…。彼は最初からわたしの元彼や初体験の相手に執着していた。自分が一番だと言わせたがった。わたしはそういうことにこだわらない人間なんだと思っていたけど、違うんだ。彼の方が恋に慣れていただけだ。だんだん欲深くなっていて怖い。歯止めをかけなければいけないのに、ここまできておいて歯止めとはという気もする。危険。