こいつはわたしの犬

精神と時の部屋

ふいに入ったお店でなつかしい歌が流れていたよ。



夕陽が海に沈んでじゅっと音を立てそうな、美しい日暮れでした。
ここ数日で稲刈りがすすんで、車の窓など開けていると、稲の匂いでいっぱいになります。
稲の匂いを嗅ぐと、その中に小さい頃の自分の姿が見えるようで、泣き出したくなるんです。
着飾っても、化粧で顔を作っても、講釈垂れても、変わらない自分の本質が、無口で人見知りでかわいくもない小さな子供のわたしが、他のなにに対してもそうしていたように、私のことを、我慢を込めた瞳で、見つめているような気がするんです。
我慢なんてしなくていいんだよと思いながら、なにも変わってないんだなと自分を情けなく思いながら、少しだけ泣いて、いつかわたしの心の宇宙を、誰かに打ち明けられたらいいなと、思います。

秋はさみしくなるから嫌いだよ