昼休みに嫌な話を聞いてしまって、トイレから出たところでトイレに入る係長と出くわして
あなたがトイレから出たあとなら、引き止めて、頬に手を伸ばして、今日夜じかんありますかと聞いていた。抱きしめてもらえばそういった諸々の不安は薄まると思った。味方につけていれば安心だもの。あなたの嫌いな女があなたに冷たくされることを嘆いてますよ。同じ係の別の女をお気に入りだと勘違いしてますよ。あなたのお気に入りは、そう、わたしでしょ、誰も疑いもしない、優等生の、優しい、癒し系の、わたしだけでしょう。
こういうくだらない気持ちが自分の中で作られることがあると、こうなってみるまで知らなかった。家のことは聖域だから、決して踏み荒らさない。けど、それ以外でなら、わたしが誰より一番でなきゃ嫌だと、はっきりと思う。わたしも嫉妬したりするんだ。驚くよ。
今日は奥さんの帰りが遅いらしく、夕食の準備をするために急ぎ足で帰っていった。わたしが誘おうと誘わまいと、聖域(サンクチュアリ)からの命ならば、元よりどうしようもなかったのだった。
だけど、触ってもらわなきゃ気持ちが治まらない。言えたらどんなに楽かと思う。余計な面倒ごとになりたくなくて、顔を見ると言えなくなるし、こんなことで連絡なんて気が引けてできない。いつも、心の底から笑えない。あなたと向かい合うときはいつも、思っていることの4分の1も言えずに、いつもいつも、泣きたくなるような気持ち。
明日会いたい。思い切りシャツの首元の匂いを吸い込んでやりたい。他の誰の分も残しはしない。