思い出はモノクローム 色をつけてくれ

9月になった。

夏にはいつもずっと輝いていてほしいのに、いつもすぐに通り過ぎていってしまう。この夏の思い出はたったひと粒のガラスのビーズになって、ポケットの底の隙間に挟まっている。ふとした時に指先に当たる感覚で、まだあるな、ここにあるなと、何度も確かめる。なかったことにならないように、そこにあることを忘れてしまわないうちは、何度もポケットに手を入れて、その度に、ささやかなきらめきのことを思っていたい。

思い出はモノクローム  色をつけてくれ

いつか振り返ったとき、このビーズの存在もきっと忘れて、いや忘れてはいないかもしれないけれど、ただのこれまでの人生の一部になって、きっと輝きは失われて、そして私は、すべてに色をつけてくれる何かとの目の覚めるような出会いを、まだ待ち続けているんだろうな。

待っているあいだの憂鬱と、去っていくあいだの憂鬱に挟まれて、もはや理想の中でだけ輝き続ける夏。だからどんどん好きになるのかもしれない。