ちちんぷいぷい

15日誕生日だった。30歳になった。
14日の夕方、明日誕生日です と係長に言ったら、早く言えよと抱きしめられた。係長は15日は職員旅行で休みなのだった。ついちゃう、と胸元から離れると、案の定リップが落ちてシャツに付いていた。その位置を見て、ああ私小さいんだなあとのんきに思う。やだ、大丈夫ですか?と言うけど、彼の都合も奥さんの都合も、私には関係ない。
ケーキよりいいかと思ってって、私にドーナツとミルクティーを買ってくる係長。駐車場で待ちあわせて、車の後部座席で誰にも見えないようにキスをする。ベストとシャツのボタンを中途半端に外されて、うまく胸がはだけない。じれったくて最後のボタンは自分で外す。
胸元に彼の頭を抱えながら、頭大きいなと思う。なんで笑ってるの?と聞かれるけど、なんとも説明できない。いとおしいと思うし、ばかばかしいと思うし、頭でかいなと思うし、わたしがなんとかしてあげようと思うし、頭をなでて、この馬鹿な男の女神でいてあげようと思うし、なんでこんな馬鹿のこと好きなんだろうと思う。
愛してるなんて、陳腐 陳腐 陳腐すぎて言われると冷める。いわなくたっていいのに、嘘でも喜ぶと思われてるんだろうか。本当だったとして、それが子供や奥さんに注がれるそれと比べ物にならないこと、それをわたしがわからないと思ってるんだろうか。ばかすぎる。悲しくなる。そんな男に体を許して、泣いて見せて気を引いて、ばかすぎて泣けてくる。
ってゆー、未遂のバースデーイブ。暗い。断る勇気が出るように、30才になったから、ちゃんとしたいとおもいます。がんばれがんばれ