こいつはわたしの犬

精神と時の部屋

I

半月で色々あった。転職決まったよ。

14日は面接を受けに行った。何とも言えない手応えだった。翌15日に採用の知らせ。あっさり転職が決まった。諦め半分だったので棚ぼた感すごい。前2つ受けた病院より条件がいいし、なによりこのタイミングだったので、正直病院の求人ならここしかないと思っていて、何としても射止めたかった。けど無理かなとも思ってた。これでダメなら仕方ない、腰を落ち着けて時間かけてじっくり職探そうと思っていた。光。しかも勤務開始もこちらの都合がいいように待ってくださるとのこと。神。予定通り7月末付で退職、7月いっぱいは有給で休むことにした。7月中頃には制服のサイズ合わせに行くことになっている。白衣。

 

昨日は職場のおばちゃん二人と遊びに行ってきた。

日本で唯一の閘門を通過する運河の観光クルーズ船に乗って、風を切って進む船から光る水面と空と緑を眺めているそのときに、23日の夜係長から着信があったことに気付いた。係長の誕生日だった。覚えていないだろうと思われているだろうということに悲しくなって、誰かに言ってもらえよと、なににも触れず、なにも言わなかったあの日。去年のこの日すでに彼には私より好きな人がいたけれど、私はそのことにまだ気付いていなくて、休憩室で寝転んでる彼の腕を引っ張って起こして、脚の間に座り込んで長くキスをして、おめでとうと言ったのだった。水しぶきキラキラ。跳ねる魚。青く晴れた空。ガイドさんの声。おばちゃん達に気づかれないように見つめる携帯の画面。

わたしが振って、わたしが終わらせる恋で、わたしが追われて、愛想を尽かした恋なのだ。馬鹿で情けないあなたが好きだよ。勤務もあと3日だし、何もかももう遅いのに、わからないあなたが好き。わたしがどうにかしてあげたかったけど、ほんとにもう遅い。

着信拒否すると通知もなくて、履歴画面にだけ履歴が残るの。したことなかったから知らなかった。コール音が鳴るだけでつながらないのかと思ったら、ちゃんと「この電話はお繋ぎすることができません」ってメッセージが流れるんだって、調べて知った。

帰宅後この履歴を眺めているときに、うっかりタッチして電話をかけてしまった。気付いてすぐ切ったけど、着歴残ったろうな、と思っていたら、朝になってしらないケータイから4コールの着信。多分係長の業務用のケータイだと思う。どうしても繋ぎたいわけじゃないから、昨晩すぐじゃなくて、しかもたった4コールで切れたの、分かってる。

まとめに「だめだと言われて我慢できる恋愛は恋愛じゃないと渦中のアイドルは言うけど、それを見た両親が、我慢できるのが愛だと言ってたのがかっこよすぎた」と2ちゃんの一レスが乗ってたけど、でもそうなんだよ。わたしは彼を愛していた。言葉や物を与えて示すことだけが愛じゃないと、彼が気付かなかっただけで。

彼の胸板の厚さを、わたしの髪を耳にかけて頬を撫でる手を、太い指を、彼としたセックスを思い出して、わたしがまだ泣くことを彼は全く知らない。もう遅い。大丈夫なふりももうあと3日で終わりにできる。やっと過去になる。このまま何も言わないつもりでいる。

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