真夏の果実

きのう、職場の送別会があって、飲み過ぎて、今日は一日中お昼寝していた。まだなんとなく気持ち悪い。

すっかり秋みたいなさわやかさ。終わりに近い桃、畳に正座して洗濯物を畳む 蚊取り線香 紺色の綿スカート
畳みながら何度も、昨日の夜のことを思い出す。

お前二次会どうする?
どうしようかな(行きたいけど心配なんです)
来い。課長も来るから。そんで課長といっしょに帰りな。
ああ、じゃあ、はい。行きます。

一歩出るのに躊躇するわたしの肩を、バスから降りるとき、座席の横を通りしなに、ほら、と言ってさりげなくたたく。踏み出す。

となりにも座らない、歌ってあげない、勧めてくれたボトルキープのお酒も断る(だって他の人もいるし悪いかなと思って)。日頃の疲れもあって、係長は眠ってしまって、方向の近い人と乗合で、いつの間にかさらっと帰っていた。

肩を叩いてくれたのも、隣においでと言ってくれたのも、西野カナも、お酒を勧めてくれたのも、嬉しいんです、ほんとうは。会場で出会い頭はっとしたような顔でわたしを見たことも。寝転びながら遠くからわたしを見ていたことも。気付いていたんです。
目の前にいると、いけないって気持ちが勝つのに、そうして離れると、途端に寂しくなって、普段我慢している分、好きだと思う気持ちが体から溢れて、どうにも我慢ができなくなって
酔っ払ってるからってことにして、
すきです
でもだめだなって思って
もう寝てますかね
ごめんなさい

女々しすぎるラインを送る。
もちろん送る前に散々悩んで、でも酔ってるから、今じゃなきゃ言えないと思って、もう・えいっと送るのです。
朝、割とそっけない返事がきて、激しい後悔の念に襲われ、わたしってほんとバカ…と、まるいちにちかけて落ち込む。

わたしってほんとバカなんです。
係長はわたしの気持ちが欲しい訳じゃないし、言ったところでどうしようもないとわかっているのに。言えば言うだけ遊びから遠のくこともわかっているのに。
だってわたしの気持ちは、遊びじゃないんだもの。

厚い手のひらを握りたかった
忘れなきゃと思うけど、どうして忘れなきゃいけないの?と思う気持ちが心の中で立ちのぼって、二人してわたしのことを殴る。ギブアップできないのは、なぜなんだろう。